書評

「屋久島トワイライト」樋口明雄 2022年 山と渓谷社 書評

世界自然遺産屋久島が舞台となっている本書。屋久島と言えば、屋久杉に代表されるように太古からの自然が色濃く残った場所であることは説明するまでもないだろう。しかし、それだけではなかったのだ。この島には異界への入口があり、数多くの怪異譚があり、そ...
書評

「サンズイ」笹本稜平 光文社文庫 書評

“サンズイ”聞きなれない言葉がタイトルとなっている本書。サンズイとは、警察用語で“汚職”のことである。“汚”の漢字の部首からきていて、ほかには、詐欺は、“ゴンベン”、偽造は“ニンベン”とも言われるようだ。また、警察小説を読まれる方にとっては...
書評

「わたしたちの秘密」中江有里 中公文庫 書評

主人公である玉(たま)青(お)は30歳。派遣社員として働いている。学生時代の先輩である青島とも交際し、一見どこにでもいるある意味普通の大人の女性である。しかし、その内実はそうではないのだ。人には打ち明けられない悩みを抱え、頼るべき親兄弟や友...
絵本読み聞かせ

読み聞かせ絵本紹介⑪

大好きな夏の絵本「なつのいちにち」(作:はた こうしろう 偕成社2004年7月)を3年生の教室で終業式に読みました。まず、表紙の絵がたまらなく好きなのです。そして、語られる言葉が少ない分、絵のもつ力と最小限の言葉が相乗効果によって、この絵本...
書評

「漂流」吉村昭 新潮文庫 書評

「漂流」(吉村昭・新潮社・昭和55年11月25日発行)は令和3年10月25日64を数えている。これだけの名著を評するなんていうことは僭越も甚だしいが、私なりの視点から思うままに書いてみようと思う。  舞台は江戸・天明年間(1700年代)であ...
絵本創作

「とんがりみんどりとトカゲのカナ子」創作記録③

さて、前回に続きモダンテクニックの話である。今回は、“ドリッピング”と“吹き流し”である。前者は、多めの水でといた絵具を筆に含み台紙にたらすものである。私の場合は、今まで数多く描いてきた詩画の中でモダンテクニックとは意識せずに使っていた技法...
書評

新潮選書 『十五少年漂流記』への旅 椎名誠 書評

今年2月、東京神田神保町の古書店巡りの際にふらっと立ち寄った三省堂本店の最後の古書市。何気なく棚をのぞき込んでいると目に入ってきた文字“椎名誠”これは、本が私を呼び込んでいると感じる。というか、学生の頃からのめり込み、“椎名誠”の本を文字通...
絵本創作

「とんがりみんどりとトカゲのカナ子」創作記録②

今回は、お話の内容や背景とは別の視点からの創作記録について書いてみたい。本書では、大きく3つのモダンテクニックを使っている。きちんと勉強したことはほとんどないし、(少し体験したり短時間の講座を受けた程度)素人の域はでないだろう。また、専門の...
絵本読み聞かせ

読み聞かせ絵本紹介⑩

「スーホの白い馬」と言えば、2年生の国語の教科書にも載っている有名なお話だ。そして、おそらく赤羽末吉の絵が最も有名ではないだろうか。名前を知らなくても、絵を見たらきっと多くの人が、「ああ、見たことある。知ってる!」という反応をするだろう。し...
絵本創作

「とんがりみんどりとトカゲのカナ子」創作記録①

久しぶりに拙著の創作記録。今回は、「とんがりみんどりとトカゲのカナ子」(2021年10月15日発行 文・絵 糸井文彦)について書いてみようと思う。まずは、このお話の背景についてご紹介したい。  創作のモチーフとなったのは、私が小学生の時の、...