神田で見つけた!「星野道夫~約束の川~STANDARD BOOKS 」星野道夫をリスペクトする思いを込めて読書アドバイザーとして書評を書いてみた!

書評

「星野道夫~約束の川~STANDARD BOOKS」 読書アドバイザーとして書評を書いてみた!

 初めて訪れた本の街神田神保町。電車を降りて地上に上がるとすぐに目に入ってくるのが様々な出版社の看板。何十年も目にしてきた有名出版社の名前をリアルに見るのはなんだか不思議な気分。そして、この地に来て思い出すのが、“星野道夫”だ。1996年にカムチャッカ半島クリル湖にてヒグマの自己により急逝されてから30年近くが経っても、今なお多くの人々の心を惹きつけて離さない。いや、今の時代にこそ必要な人なのだと思う。

星野道夫~約束の川~STANDARD BOOKS 

星野道夫が神田で偶然見つけた写真集でアラスカのシシュマレフ村の写真に心を奪われシシュマレフ村を訪れたことから彼の写真家人生が動き始めたのは有名な話だ。尊敬してやまない星野道夫、彼の言葉にどれだけ心を揺さぶられたことだろうか。そして、数々の写真から何度も目が離せなくなった。今から、約50年近く前に彼が歩いた神田の町で偶然見つけた「星野道夫~約束の川STANDARD BOOKS」勿論、即買い。一気読了。この経験を何かの形にしておきたい。彼をリスペクトする気持ちをのせて書評なるなるものを書いてみた。もし、読んで頂けたなら幸いだ。

星野道夫~約束の川~ STANDARD BOOKS

 長い冬の間、雪と氷に閉ざされる北極圏アラスカ。一見、生命の息吹も感じられない荒野。しかし、そこには確かに野生動物の生命があるのだ。荒野を生きる野生動物の生命は逞しく、時に儚く脆いものである。本書は連綿と続く悠久の時の流れの中の野生動物を写真に収めた動物写真家の珠玉のエッセー集である。しかし、忘れてはならないのは人々との関わりである。厳しい自然の中での人との繋がり、その原点ともいえる姿が、まるで一筋の光が差すような言葉で語られているのだ。まさに文学作品とも言える1冊である。また、装丁も素晴らしい。読むだけでなく手元にずっと置いておきたくなる1冊なのだ。

 その動物写真家は星野道夫。カムチャッカでヒグマに襲われて急逝してから20年以上を経た今でも人々の心を掴んで離さない。それはなぜだろう。悠久の時の流れの中で、1万年前と変わらない自然の姿、野生動物の姿、足元の可憐な花の姿を捉えられたことに対し、また、アラスカの一時代を生きてきた人々との出会いに対し、“間に合った”と彼は言う。また、「心のフィルムにだけ残しておけばいい風景が時にはある」との言葉を遺している。優れた写真家としての仕事は勿論のこと、数多くの文章を遺してきた星野道夫。著作の中から厳選された本書「STANDARD BOOKS」は既に彼を知っている人にとっては改めて心に染み渡るものになるであろうし、初めて彼の文章に触れる人にとっては、現代に生きる我々が、ともすれば忘れかけている心の奥深くにある誰もがもつ“あたたかさ”を呼び起こしてくれるかもしれないものだ。

 筆者が存在を知ったのは、残念ながら没後であった。しかし、彼の文章に触れることができたことはこの上ない僥倖なことであるのだ。それはなぜか。一言で言い表す言葉を不覚にも私は持ち合わせていない。書評としては失格だ。しかし、これだけは言える。人々の心を豊かにする力があるのが本書である。(評・糸井文彦)

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