おじいちゃんのイカ 創作記録 最終回
さて、いよいよ最終回?!のつもりで書き進めてみよう。内容についての話である。
P.2・3の海ぞいの道を走る車で走っておじいちゃんが待っている田舎へ行く場面。あの道は、明確にイメージがある。それは、京都府舞鶴市から宮津市へ向かう道、奈具海岸というところがある。ここは、本当に絶景ポイントだ。高速道路ができてからはあまり通らなくなったが、当時を思い出して大人になってから一人で走ったこともある思い出深い道だ。
そして、八幡神社での蝉取り。これは本当にキラキラと輝いている思い出だ。当時はクマゼミは本当に珍しかった。あのうるさいほどの鳴き声が耳に残っている。八幡神社は、「おじいちゃんのイカ」が刊行された夏に久しぶりに行った。
P.8・9のイカの登場場面。ハエとり紙がぶら下がっている。今でもあるのだろうか。懐かしい。ちなみにこのページから時々登場するネコは実はいなかった。おじいちゃんは魚屋だとあるが、もともと若い頃は神戸にいたらしい。当時どんな仕事をしていたのかは結局聞くことが出来ないままになってしまった。戦争がひどくなり空襲で危ないうことで疎開をしてきたらしい。もともと京都府の丹後地域の出身だったから戻ってきたということだろう。戻ってきたものの仕事がなく、魚を仕入れて売る仕事を始めたと聞いたことがある。魚屋と書いたが実際の店舗があったわけではないのだ。
畑で野菜を作っていたのは事実。夏休みには畑によく連れて行ってもらった。P.19の場面で文太が腹痛で畑に用を足したのは事実だ。詳細の記憶は曖昧だが。P.23で白いヘビが登場する場面。これは、実は遠くから見たら白いロープが落ちているように見えたので、走っていってぴょんと飛び越えた瞬間に白いヘビだと気づいたのだ。これにはマジで驚いた。
他にも絵本に入れたかった場面もあるが、全体を振り返ってみると概ね事実を基にしている。また、後になって母から聞いたことも含まれている。いずれにしても、私自身の記憶を少年文太に投影し絵本という形で形作ったものだ。現在、7冊の絵本を刊行しているが、やはりいちばん思い入れがあるのが正直な気もちだ。
最後に、新装版を刊行した理由について書いておこう。出版契約が切れて在庫はあるものの新刊としての流通が途切れてしまった。欲しいけど手に入らないという声が聞こえてきたり、中古の本が様々なサイトでまさしくピンキリの価格がつけられて売られていたりした。安いものは200円程度から、高いものは定価の倍くらいの価格があったのだ。そこで、「おじいちゃんのイカ」以降の絵本を刊行させてもらっているニコモから新装版として刊行できるとのことなので、新装版として刊行させてもらうことにしたのだ。その際、絵の配置等を鑑みたところ、横書きの左開きでの可能だったので、ちょっとした遊び心で横書きバージョンにしてみたのだ。
さあ、ここまで長い創作記録になるとは予想もしなかった。が、楽しく書くことができ、自分自身の記録として一区切りつけることができた。ここまで読んで頂いた方々には本当に感謝したい。これにて「おじいちゃんのイカ」創作記録おしまい。