夏の美術館探訪記⑤

鑑賞

特別展-画業50年のあゆみ-

黒井健絵本原画展in姫路文学館

西宮市大谷記念美術館を後にし、向かったのは姫路文学館。これも、どうしても行きたかった、いや、行くべきだった、行かなければならない(ことはないか)黒井健絵本原画展。思い浮かぶのは、やはり『ごんぎつね』の挿画だ。『ごんぎつね』は、今なお4年生の全教科書に掲載されている新美南吉の名作だということは言うまでもない。今まで何度となく授業で子ども達と一緒に読んできたし、研究授業に向けて愛知県半田市にある新美南吉記念館や、南吉の生家にも足を運び、少しでも物語の背景に迫ろうとしてきた。そんな物語の力をより際立たせているのが、黒井健さんの挿画だ。もちろん他の作家さんの挿画を否定するわけではないが、僕の中ではやっぱりごんぎつねの挿画は、あの、ごん、あの、兵十なのだ。

順に鑑賞を進めていくと、全くた言っていいほど知らなかった初期のイラストたち。イメージとは全く違うが、やはり50年という年月の変遷を感じさせられる。また、様々な言葉から決して順風満帆に歩みを進めてこられたわけではないことが伝わってくる。苦悩も当然のごとくあっただろう。

そして、眼前に現れた『ごんぎつね』の原画。あの、ごんぎつねがここにいる!これが本物だ!と思うと感慨深い。あの切ない物語がここにある。ご本人の言葉によると、『ごんぎつね』の絵を描きあげたことが大きな転機となったようで自信がついたとのこと。続いて『手ぶくろを買いに』の原画。いわゆる出世作らしい。

そして、本当に知らなかった数多くの絵本や児童文学作品たち。(300冊以上もある)そして、ご自身で絵と文の両方を手がけられた作品もある。また、印象深かったのが、アメリカのミシシッピー川をカヌーで旅されたこと。その旅の絵が数枚展示されていたのだが、これが本当に美しく観ているものを旅の中の風景へと誘っていくのだ。

こうして、今まで知らなかった数多くの絵本原画に触れられたことは貴重な経験だったし、プロフェッショナルの本物の仕事とは何かということをまざまざと見せつけられた気もした。

最後にショップへ。あるではないか!ミシシッピーの旅の画集を見つけた。もちろん買った。なんて美しい絵なんだろう。

P.S.次の日、ブックオフが20%オフらしく、特に目的もなくフラッと行ってみると、最初に目についたのがなんと黒井健の画集!定価のサンブンノイチくらいの値段で買える。更には、手元にもっておきたかった『ごんぎつね』がなんと200円程、これは運命だと勝手に決めて買いましたとも。

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