さて、前回の続きである。今回は、この話ができた背景と内容について書いてみよう。まずは、お話の最後に登場する女の子かんなちゃんについてだ。かんなちゃんは、実在する幼稚園児の女の子だ。しかし、「くじらのカレー」が刊行されてからも実際には会ったことがなかった。ようやく先月、念願の対面を果たすことができたのだが。かんなちゃんは、ぼくの同僚の娘さんだ。昨年度、初めて一緒の学年を担当したのだが、ぼくの“絵本”に関する活動にも興味をもって頂いていたことから、おすすめの絵本を紹介したり、かんなちゃんに読んであげるといいよって感じで絵本を貸したりする交流が深まっていたのだ。その度に、お礼のメッセージ動画を送ってくれていたのだが、どうやら自分でも絵本を描きたいという熱が高まってきたようで、ぼくへのプレゼントとして贈ってくれたのが、元祖「くじらのカレー」なのだ。数ページに綴られた手作り絵本は、子どもらしく邪気がない絵とシンプルながらユーモアたっぷりのストーリーで、素晴らしい完成度だったのだ。(到底かなわない!と本気で思った。)
カレーを鍋ごと食べて、「あち~!」と言うなんて設定は、自分では絶対に思いつかない。ただ、この元祖「くじらのカレー」を読んだ瞬間から、ふつふつとイメージが広がっていったのだ。そこで、このアイデアが欲しいとお願いし、このエピソードを軸にしてお話を組み立てていくことにしたのだ。かんなちゃんの「くじらのカレー」の登場人物はくじらだけだったのだが、そこへ、ねずみ、ひつじ、そして、かんなちゃん自身を登場させて1冊の絵本へと構成したというわけなのだ。
他の動物やかんなちゃん自身も登場させたことで、タイトルをどうしようかと迷った。最後に出てくるかんなちゃんのエピソードのオチで終わらせることを考えると、「かんなのカレー」の方が相応しいかとも思ったのだが、やっぱり表紙はくじらにしたいし、もともとのアイデアである、くじらが鍋ごとカレーを食べるというエピソードを大事にしたかったので、そのまま「くじらのカレー」とすることにした。いざ、完成してみると、日を追うごとに出来栄えに満足がいかなくなっているが、(というか、作品自体は気に入っており、好きだけど、もっとレベルアップできるなあという意味を込めて)「くじらのカレー」としたことは正解だったと感じている。忘れてはならないのは、この絵本ができたのは、紛れもなくかんちゃんのおかげだ。ぼくの堅い頭ではできなかった1冊だ。実物を手に取って頂いた方はお気づきかもしれないが、奥付に感謝の気持ちを表すために、「Special Thanks Kanna~くじらのカレーのアイデアをくれたKannaへこの絵本を贈ります」の一言を添えた次第だ。
そして、もうこの場で宣言してしまおう!「くじらのカレー」シリーズ化決定!(ぼくの心の中では・・・)